それでも老いていく (2011/11/16 08:53)

「荒波をくぐり抜けて大洋を渡ってきた大きな船も、港に入る時には小さな艀に曳いてもらいます。大きければ大きいほど速度を落とし、自らの立てる波さえ憚って、眼下に散在する小さな船を気遣いながらゆっくりと慎重に…」
と学生の時に聞きました。
今思えば、その頃は先生のおっしゃる意味が全くわかっていませんでした。

この数年、実家の両親の余命というものを考えざるをえなくなったり、義母の変化を目の当たりにするにつけ、この言葉を思いだすことが多くなりました。

日本には「枯れる」という言葉があります。
 
欲望や我の強さがなくなり、人生を達観した姿を表しているのだとおもいますが、いわば人生の闘いの第一線から退いた精神の有様を、否定的に捉えるのではなく、果敢に苦難に立ち向かったり、人生の目標を知恵と努力で見事にクリアすることより、むしろ一段すすんだものとして捉えている言葉なのでしょう。とても温かい、含みのある言葉だと思います。

人生の荒波に立ち向かうこと、上昇気流に乗って遠く高く羽ばたくことだけを、上質な充実した生き方と捉えていたら、年老いていくことは、惨めな負け組に転落していくことだったり、色褪せた硬直した時間を耐え忍ぶことを意味するかもしれません。
ですが、老いることを、「今までとは別の価値観に移行していくこと」と捉え直すことで、自由で軽やかな、素地のままの自分を生きる時間にできるのではないでしょうか。

今は他人事としてこんなことを言ってますけれど、上手に老いていくには、案外早くから少しずつ心の準備をした方がいいのかなあ…、とか考えてしまう今日この頃なのです。

幹に充分な栄養を与えるために木の葉が紅葉することはよく知られています。でも人間は幸か不幸か自動に「枯れて」いくわけではありません。
「生涯現役」「若い者に負けるか」と頑張るのも、困難だけど素敵なことです。どちらにしても、それまでの人生が反映されることに変わりはありません。結局、「今を丁寧に生きていく」ということに尽きるのかもしれませんね。
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by treeintheheart | 2013-06-21 00:19 | 考えていたこと

魂の奥に下りて行って不思議な扉を開けてみてください。幾千年の時を経た大樹の息づく深い森。滴る光、湧き零れる水。そこに満ちる声の囁きを聴ける人になりたい。人の魂が、この星とそこに息づく数多の生命と、深いところで繋がっていることを感じとりたい。カリスマ性なんか微塵もない主婦Aの「闘病」「子育て」「考えごと」の記録…になるはず


by treeintheheart