それぞれの優しさ

私が一年間の入院から帰宅した時、子供たちは私を一生懸命受け入れてくれた。

義母は
「まったく!★△■◇◎▲だわF6BE.gif
と大声で独り言を言いながらも私の代わりに炊事を引き受けてくれた。


食後、義母が部屋へ引き上げると、
長女は、
私の代わりに台所の片付けを始めた。
次女は、
黙って私の傍に来て背中をさすりはじめた。
長男は
小学校2年生だったが、当時凝っていたやり方でココアを淹れてくれた。

それぞれがそれぞれのやり方で私を包んでくれた。打ち合わせなどもちろんない。それぞれの性格や思いが映し出されて、ぴったりとひとつの絵に仕上がったような不思議な時間だった。



あれから、もう10年以上経った。

長女は、帰宅するとすぐに髪を結び手を洗い、
「何すればいい?」
と訊く。
それまで私がノロノロと作っていた料理が、長女の手にかかるとあっという間に出来上がる。
まるで「ファンタジア」の中で、魔法使いの弟子の未熟な魔法にかけられていた箒やバケツや諸々が、帰宅した師匠の魔法のもと、みるみる元通りになっていく 、あのシーンみたいに。

長男は映画に凝っていて、お気に入り作品のDVDを買ってきては「観ろ」「観ろ」とうるさい。
あのねぇ、私が一日中寝ていると思ってるんでしょ。そうじゃなくて、ゆっくりゆっくり動いているんだから。一つのことをやるのに人の何倍も時間がかかるから、むしろ忙しいのよ。
えっ?いつも止まって見える?…うーん…

次女は今、部活やバイトで帰宅が遅い。 家事もあまり手伝わない。というより、次女が帰ってきた時には、長女の手ですべてが片付いている。

ただ、夜になると私はスタミナ切れで大抵リビングの床に転がっている。陸に上がったトドみたいに。それでも、小一時間もすると少しは充電でき、自分の部屋までたどり着くことができる。次女は、それまで傍らにいてくれる。
ただそれだけのこと、と思われるかもしれないが、いつ動くもしれない時を待って傍らにいるのは、とても忍耐のいること。そして、私にとっては、呼べば聞こえるところに誰かがいてくれるだけで、どんなに心強いか。



何も出来ない、母親格の私を、3人ともそれぞれに思いやってくれる。
なんて幸せなんだろう。


今の私の願いは、3人がお互いの違いを認めあい、これから先も力を合わせていってくれること。
誰が一番とかじゃなくて、ただ表現の仕方が違うだけ、みんな優しいのだから。
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by treeintheheart | 2013-06-07 15:08 | 日々

魂の奥に下りて行って不思議な扉を開けてみてください。幾千年の時を経た大樹の息づく深い森。滴る光、湧き零れる水。そこに満ちる声の囁きを聴ける人になりたい。人の魂が、この星とそこに息づく数多の生命と、深いところで繋がっていることを感じとりたい。カリスマ性なんか微塵もない主婦Aの「闘病」「子育て」「考えごと」の記録…になるはず


by treeintheheart