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すべてみどりになるまで

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魂の奥に下りて行って不思議な扉を開けてみてください。幾千年の時を経た大樹の息づく深い森。滴る光、湧き零れる水。そこに満ちる声の囁きを聴ける人になりたい。人の魂が、この星とそこに息づく数多の生命と、深いところで繋がっていることを感じとりたい。カリスマ性なんか微塵もない主婦Aの「闘病」「子育て」「考えごと」の記録…になるはず

カテゴリ:詩、物語、短歌…( 24 )

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いつか

何も書けなくなり
何も話せなくなり
見ることも
聞くことも
叶わなくなったとき

それを
受け入れられるように
弾き返さず
押し潰されず

迫り来るものと
均しい力で
受け止められるように

測っておこう
私の
内にあるもの
まだ
名もない
   それ


日々を共に過ごす人は
知らない
この道の果てに
針の跡のような影

私は
それに向かって
歩いていることを

歩かなければならないことを


昼も夜もひたすらに
寄せては返す波が
そのたびに数多の貝を
拐っていくように

闇が
私を消し去る前に
影を太らせる前に

私は
  捕まえる

私の
内にあるもの
まだ
名もない
   それ


(20110929-201705041812)
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by treeintheheart | 2017-05-05 15:27 | 詩、物語、短歌…
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花の渦
溶きて地上を
おほいたり
護星も我を
見失うらむ
(201504100824)




桜の花の散るさまに心乱れるのは日本人だけなのだろうか、
という疑問をよく耳にする。
そんなことはあるまい。
けれども、「咲く」ことに比べて「散る」ことにこれほどの関心と賞賛を寄せる民族は、やはり少ないのではないだろうか。
かくいう私も、桜花が風にはためくカーテンのように一面に舞い散るのを見た時には、その巨大なエネルギーに圧倒された。
薔薇にも、牡丹にも、セコイアにもない有無を言わさぬ何かが其処には在って、私はたちまち屈服させられてしまった。
「今まで、ヤレ梨の花の方が風情があるの、梅の方が香りが高いの、桃は愛らしくてその上霊力があるの、などと四の五の四の五の言って、申しわけありませんでしたっ!!
やはり、あなたが一番ですっ!!!!」
とでも言いたくなる何かが。

写真は、今月4日の谷中墓地付近の桜である。
数年前、義母のバースデーケーキを買いに此処を訪れた時と違って、空気はまろやかで、墓地だというのに妙にフレンドリーだった。
例の店の前では、常に数人がベンチに座って買ったばかりのケーキを食べている。その奥の墓地の其処此処に桜が植えられている。
まだ満開ではなく五分咲き程度だったが、心を浮き立たせる晴々しさがあり、風が吹くたびに花がはらはらと散ると、花見客?の小さな歓声が上がった。
銀杏の樹はあの時と同じように美しい姿で後景に静かに立っていた。



散りてこそ
愛しまれしを
桜花
枝の毛虫に
雨風荒ぶ
(201604090907)



軽やかに
散るを捨てても
その花は
何を見つめつ
踊り狂うや
(201605042301)



丸きまま
落ちたる花を
並べゆく子は
彼の年の
幻にも似て
(20160505.....)
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by treeintheheart | 2017-04-17 09:21 | 詩、物語、短歌…
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時間がないんだ
お願いだから
大人の対応は止めてくれ
穏やかな日常の中の新発見や
心を和ませる小さな物語を
気遣いながら語ってくれる
君の中では今でも
私は十七歳のままなんだね


でも、私が知りたいのは
君が隠し通そうとしている
あの子の最後の物語だ
陽気な人気者だった
自分をてるてる坊主だなんて
言っていたっけ
未だに意味は不明だけど


招待状が届くたびに
どれほどわくわくしただろう
最後の電話をかけてきた
気づかないまま受話器をおいた
君のことを話していたよ
憶えているのはただそれだけ


あの子のことを聞きたいんだ
君とだから話したいんだ


ああ、やっぱり私は
十七歳のままだね
こんな風にいつも
困らせていた
君のことも

彼女のことも
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by treeintheheart | 2014-06-03 12:29 | 詩、物語、短歌…
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詩を書くということは
ワタガシのように
細い細い思いを
そっとつまみ上げ
手の中で融ける前に
丹念にほぐしてから糸に撚り
言葉へと紡いでいくことだ



織り上がったものを目にして
私たちは驚く

この人も抱えていたのか
同じ思いを
同じ記憶を
同じ祈りを

私たちは
ただの通りすがりではなく
迎えられて此処に来たのだ


探し求めていたものが
くっきりとそこに立てられている
他の誰か
同じように探し求めた
誰かの手によって
独りではない証として

そんな経験をすることだ
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by treeintheheart | 2014-05-22 01:44 | 詩、物語、短歌…
脱ぎ捨てし
吾子の衣を
たたみつつ
離れて後も
安かれと願う

(2013年10月31日)




青き風
吹き抜けてなお
消え去らぬ
父母逝きし
朝の病葉
(2014/04/15 00:54)




御手を求め
見上げし空は
高く高く
眩むばかりに
光満ちてあり
(2014/04/23 06:05)
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by treeintheheart | 2014-05-05 14:28 | 詩、物語、短歌…
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4月末で父母が住んでいたマンションを引き払いました。
いわゆる高齢者向け賃貸住宅というもので、24時間ケアしてくれるので、私のように諸事情から介護できず、しかも病身または認知症状等のある親の生活を心配している方にはお勧めです。
29日には引き渡しの為の点検に立ち会って来ました。
あれほどモノに溢れていた室内がガランとしていて、ちょうど一年前、母と見学に来たことを思い出しました。

元々、自分の体力が急速に衰え、ひとりで母を介護することに不安を感じ始めた父が、強く入居を希望していたのですが、父の病状も、自分の病状を全く解っていない母は引越したがらず、説得に3ヶ月もかかってしまいました。

入居後も捨ててきたモノと部屋の狭さに(実際はこのような施設にしては破格にゆったりした2LDKなのですが)文句タラタラでした。
その上イベント(スイーツ作りやガーデニング)に参加させてもらえば「奉仕作業にかり出された」というし…困惑することしばしばでした。

入居したとき、母は既に余命宣告を受けていましたし、父も急に寝たきり状態になり、癌が進行していることは明らかでした。父はもちろん、母にしても漠然とした、けれども深い不安を感じていたことでしょう。その不安と焦りが、様々な我が儘や拘りになって表れ、私は毎日板挟みに悩みました。
結局、何の心配もなく、毎日ゆったりと趣味や楽しいことだけをして最後の時間を過ごして欲しい、という私たちの目論見は大きく外れ、疾風怒涛の一年間になってしまったのです。


帰りのエレベーターにイベントカレンダーが貼ってありました。よもぎ団子作り、書道教室、誕生会、映画鑑賞会等、相変わらず毎日盛りだくさんです。
父母が気持ちを切り替えて現状を受け入れることが出来ていたら、イベントや他の入居者ともっと親密になる時間があったら、幸せな一年間になっていたかもしれません。
でも、それは普通の状態ならできることで、二人に「気持ちを切り替える」なんていう余力はなかったのかもしれません。
歯痒い思いが繰り返し甦るのですが、当時さえどうしようもなかったのでした。

それでも、亡くなる直前に入院を拒んだ母は、部屋に戻って来て「やっぱりここが我が家よね」と言ったことを、スタッフの方が涙ながらに話してくださいました。
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by treeintheheart | 2014-04-16 12:40 | 詩、物語、短歌…
枝先に
残る病葉(わくらば)
見上げたる
瞳の先に
朝陽こぼれむ


風止みぬ
今宵かぎりと
病葉を
きみの祈りが
結びとめしか


若き日は
薊と呼ばれし
母なりき



蒲公英の
綿毛のように
還りたい
いずれいくなら
春陽の中を
20130413
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by treeintheheart | 2014-04-15 07:49 | 詩、物語、短歌…
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あれは島だよ
とあなたが言う

あれは船よ
とわたしが言う

ほら、見えないの
ゆっくりこちらに
近づいてくる

あれは島だよ
知らないくせに
昔からずっと
あそこにあるんだ

些細なことで口喧嘩
お互いを見つめるだけなら
喧嘩になんかならないのに

浜へ駆け降りた朱い背中に
呟きたくなる自分を
そっと戒めた

あなたが軽く叩いてやると
砂にまみれたビーチボールも
たちまち息を吹き返す

つかの間のプライベートビーチ
二人の間でキラキラと
弾かれるたびに鈴が鳴る
ボールはやがて見えなくなった

二人なら
こんなにラリーが続くのに
試合で組むと必ず揉めたね
パーキングに戻りながら
あなたの背中に投げかける

つまらないこと蒸し返すなよ
あなたの両手に挟まれて
ボールはキュッと押し黙る

違うの ちょっと思い出しただけ
わたしは ゆっくり笑ってみせる
嫌な思い出じゃないから

嫌な思い出なんかないから
そう 今となっては

相変わらず変なやつだな
あなたの背中は朱から黒へ
その背中に触りたい
確かめたいことがある
闇に溶けて見失う前に


ほら見ろよ
ふいにあなたが
沖を指す

さっきから
変わってないだろ
やっぱりあれは
島なんだよ

そうね
島かもしれないわね
わたしは ゆっくり
笑ってみせる

あれは 船よ
あの船に
乗っているのは…


あなたは知らない
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by treeintheheart | 2014-03-04 00:25 | 詩、物語、短歌…
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繰り返し下ろされる鈍色の帳
密やかに陽は上りまた沈む
見渡す限りの屋根に道に
ただひたすらに雨が降る


ラグーンを支える幾億の杭のように
山に街に川に田畑に
静かな疑問符の羅列が
隙間なく打ち込まれる


抗い難い声ともに
永遠(とわ)に 永遠(とわ)に
永遠(とわ)に 永遠(とわ)に…と


天と我等の間に揺らめく無数の精霊が
各々の胸に作り上げた仄白く光る珠を
約束の合図とともに
懐かしい大地へ向けて解き放つ


これは春を迎える儀式なのだ
軟らかに潤った被膜の下から
無数の生命(いのち)が再び芽吹く


待ちかねて眠りに落ちる
冬の睫毛に氷の滴がふるえている
溶けて滑り落ちていく
頬の曲線(まるみ)を夢に辿りながら
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by treeintheheart | 2014-03-02 05:03 | 詩、物語、短歌…
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クリスマス
世界中が陽気に浮かれ騒ぐ

約2010年前のベツレヘム
砂漠の町は寒かったのだろうか
若いマリアは どんな思いで
その時を迎えたのだろう

10ヶ月前
思いがけない来訪者
天使ガブリエルは告げた

《受胎告知》

天使の言葉に
マリアは静かに答えたという
「わたしは主のはしためです、
お言葉通りこの身になりますように」

その時マリアはイエスの運命を
どこまで知っていたのだろう

星空の下
生まれたばかりのイエスを胸に抱いて
その鼓動を感じながら
無学な貧しい女は
何を考えたのだろう

我が子であって我が子でない
救世主と呼ばれるであろう小さな命

自分の腕の中に眠る小さな赤ちゃんは
他の子と何も変わっては見えないのに
今こうして安らかに眠っているのに

神様 どうして
この子でなければならないのでしょう
私は平凡な女です
どうか同じように
平凡な運命をこの子にも
お与えください

押し殺された叫び
赦されない願い

広すぎる砂漠の中で
溶けていく小さな決意

12年後
イエスは神殿を父の家と呼び
その知恵で学者達を驚嘆させる

その時マリアはどうしたか
聖書は次のように書き残している

《すべてのことを心に留めていた》

告げられた運命の最後まで
マリアは息子とともにいた
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by treeintheheart | 2013-12-02 10:31 | 詩、物語、短歌…